箱根駅伝の往路最終区、5区は小田原中継所から芦ノ湖までの20.8kmを上る区間です。大会公式サイトによると、標高差は約834m。読売新聞は、日本陸上競技連盟が公認する長距離のコースではスタートとフィニッシュの標高差が1000分の1以内と決められていることを挙げ、20km余りで800m以上上るこの区間がいかに過酷かを伝えています。この記事では、5区の距離の変遷と名選手の記録をたどります。
5区の距離はどう変わったか
読売新聞によると、5区の距離は時代によって変わってきました。2005年の第81回大会は20.9kmで、現在とほぼ同じ距離でした。その後、第82回から第90回大会までは23.4kmと長くなり、函嶺洞門の通行禁止でバイパスを通るコースに変わった第91回大会からは、再計測で23.2kmとなりました。2017年の第93回大会で4区と5区の距離が見直され、5区は2.4km短い20.8km、4区は20.9kmになっています。
- 第81回(2005年):20.9km
- 第82〜90回(2006〜2014年):23.4km
- 第91〜92回(2015〜2016年):23.2km
- 第93回(2017年)以降:20.8km
読売新聞によれば、コースが変わったため、第90回大会以前の5区と6区、往路、復路、総合の記録は参考記録となりました。距離が異なる時代の記録は、単純には比べられません。
山上りの先駆者たち
読売新聞の5区特集は、最初に名をはせた山上りのスペシャリストとして、大東文化大学の大久保初男選手を挙げています。第50回大会から4年連続で区間賞を獲得し、第51回、第53回大会では区間新記録を出しました。1980年代には早稲田大学の木下哲彦選手(第59〜62回)、1990年代には大東文化大学の奈良修選手(第66〜69回)が活躍しています。
3人の「山の神」
「山の神」という言葉が知られるきっかけになったのが、順天堂大学の今井正人選手です。読売新聞によると、今井選手は2年生だった2005年の第81回大会で、20.9kmの5区で11人を抜き、1時間09分12秒を記録しました。続いて、23.4km時代に4年連続で区間賞を獲得したのが東洋大学の柏原竜二選手です。1年生だった2009年の第85回大会で8人抜きの区間新記録を出し、4年生の時には1時間16分39秒の区間新記録を出しました。チームは4年間で3度総合優勝しています。
3人目は青山学院大学の神野大地選手です。2015年の第91回大会では、23.2kmだった5区で46秒前の走者を抜き、1時間16分15秒でチームの初優勝に貢献しました。翌年も区間2位で走り、チームは2年連続の完全優勝を果たしています。
20.8km時代の記録ラッシュ
20.8kmになってからの5区は、記録の更新が続いています。読売新聞によると、第94回から第96回大会まで3年連続で区間記録が塗り替えられました。第99回大会では城西大学の山本唯翔選手(1時間10分04秒)と順天堂大学の四釜峻佑選手(1時間10分19秒)が第96回大会の東洋大学・宮下隼人選手の記録を破り、第100回大会では山本選手が1時間09分14秒で2年連続の区間新記録を出しました。
その後も更新は続きます。第101回大会では青山学院大学の若林宏樹選手が山本選手の記録を3秒上回る1時間09分11秒、第102回大会では同じ青山学院大学の黒田朝日選手が1時間07分16秒を記録しました。若林選手の記録を1分55秒上回る大幅な更新です。月陸Onlineは黒田選手を「シン・山の神」と伝えました。
5区の記録は往路の記録にも直結します。第102回大会の青山学院大学は往路を5時間18分08秒で走り、第100回大会に自ら出した往路記録5時間18分13秒を5秒上回りました。早稲田大学も5時間18分26秒で往路2位に入り、上位2校がともに5時間18分台で往路を終えています。
- 1位
- 黒田朝日(青山学院大)1:07:16(2026年)
- 2位
- 若林宏樹(青山学院大)1:09:11(2025年)
- 3位
- 山本唯翔(城西大)1:09:14(2024年)
- 4位
- 斎藤将也(城西大)1:09:28(2026年)
- 5位
- 工藤慎作(早稲田大)1:09:31(2025年)
上の表は、読売新聞の区間記録歴代ベスト5(第93回大会以降)による5区の上位5人です。5人のうち4人が第100回大会以降の記録で、城西大学が2人、青山学院大学が2人を占めます。
受け継がれる愛称
読売新聞によると、城西大学の山本唯翔選手は「山の妖精」と呼ばれました。大学周辺の薄暗い山道の練習コースを、白いキャップ姿で軽快に駆け上がる姿から付けられた愛称です。早稲田大学の工藤慎作選手は、漫画の主人公と名前が似ていることや眼鏡をかけた姿から「山の名探偵」の愛称で知られています。第102回大会では城西大学の斎藤将也選手も1時間09分28秒で歴代4位に入り、城西大学は山本選手の卒業後も5区の上位に名を連ねています。「山の神」から始まった5区の愛称は、選手の個性とともに受け継がれています。
最も急な上り
読売新聞は、5区の中でも屈指の急坂として、小田原中継所を出て9km過ぎの宮ノ下を挙げています。富士屋ホテル前の宮の下交差点を左折し、小涌谷駅へと上っていく区間です。工藤選手は、この坂を記録更新のための課題として挙げていました。最高地点を越えた後は芦ノ湖へ向けた下りが続き、上りとは異なる走りが求められます。
5区が往路を決める
日刊スポーツによると、第102回大会の黒田選手は首位と3分24秒差でたすきを受け、往路優勝まで逆転しました。第101回大会でも、若林選手が9.5km付近で中央大学を抜いて首位に立っています。2大会続けて、5区での逆転が往路優勝を決めたことになります。
参考資料
- コース紹介(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
- 箱根駅伝とは(概要・歴史・豆知識)(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
- 箱根路の5区に君臨するのは「山の神」「山の妖精」から「山の名探偵」へ…近年は記録ラッシュ(読売新聞オンライン)
- 箱根駅伝 区間記録歴代ベスト5(読売新聞オンライン)
- 【箱根駅伝】青学大、大逆転の往路V「急造クライマー」5区黒田朝日が3分24秒差ひっくり返す(日刊スポーツ)
- “シン・山の神”青学大・黒田朝日 異次元の区間新記録で5区を征服(月陸Online(月刊陸上競技))
- 箱根駅伝 2025:青山学院大が大会新記録で連覇、国学院大の3冠阻む(読売新聞オンライン)
記録は大会公式サイト「過去の記録」に基づきます。