箱根駅伝 専門メディア第103回大会 2027年1月2日・3日

コース・文化

6区・山下りの科学と記録:100mを16秒で駆け下りる20.8km

平均で100m16秒台前半、時に13秒台。復路の最初に置かれた山下りの区間を記録から読み解く。

目次
  1. 「落ちていくような」スピード
  2. 第91回大会以降の記録
  3. 2026年、1秒差と3秒差
  4. 第1回大会の6区
  5. 5区と6区は「山の2区間」
  6. 復路の流れを決める区間

箱根駅伝の6区は、復路の最初の区間です。芦ノ湖をスタートし、前日に5区の選手が上った道を小田原中継所まで一気に下ります。距離は5区と同じ20.8km。5区が「山上り」なら、6区は「山下り」の区間です。この記事では、大会公式サイトと読売新聞の区間記録をもとに、6区の特徴と記録の歩みを整理します。

冬の湖と雪をかぶった富士山の風景イラスト
芦ノ湖は往路のゴールで、復路のスタート地点。6区はここから小田原へ下る(イラスト:Voxlynest編集部)

「落ちていくような」スピード

大会公式サイトによると、5区の標高差は約834mで、6区の選手はこれを一気に下ります。選手は平均して100mを16秒台前半で走り、時には13秒台までスピードが上がることもあるといいます。経験者は、その感覚を「落ちていくような」と表現しているそうです。100mを16秒で走り続けると、1kmあたり2分40秒のペースになります。

5区(往路)は上り →6区(復路)は同じ道を下る01016.220.8km最高地点 約874m小田原芦ノ湖※ 標高差約834m・最高地点は公式サイトより。途中の曲線は概略
5区(往路)は上り →6区(復路)は同じ道を下る01016.220.8km最高地点 約874m小田原芦ノ湖※標高差約834m(公式)。曲線は概略
6区は5区と同じ道を逆にたどる。前半に最高地点まで上った後、小田原へ向けて下りが続く(大会公式サイトの数値をもとにVoxlynest編集部作成、曲線は概略)

6区は下りだけの区間ではありません。芦ノ湖をスタートしてから国道1号の最高地点までは上りがあり、そこから小田原までの長い下りに入ります。上りと下りの両方に対応できる走りが求められる区間です。

第91回大会以降の記録

読売新聞によると、函嶺洞門の通行禁止によって、第91回大会から5区と6区はバイパスを通るコースに一部変更されました。このため、第90回大会以前の6区の記録は参考記録となっています。読売新聞の区間記録歴代ベスト5も、6区については第91回大会(2015年)以降の記録を対象にしています。

1位
野村昭夢(青山学院大)56:47(2025年)
2位
小池莉希(創価大)56:48(2026年)
3位
伊藤蒼唯(駒澤大)56:50(2026年)
4位
石川浩輝(青山学院大)57:15(2026年)
5位
館澤亨次(東海大)57:17(2020年)

2020年の第96回大会で東海大学の館澤亨次選手が出した57分17秒は、長く6区の区間記録でした。それを2025年の第101回大会で30秒更新したのが、青山学院大学の野村昭夢選手の56分47秒です。史上初の56分台で、野村選手は最優秀選手に贈られる金栗四三杯と、この大会から新設された大会MVPに選ばれています(4years.による)。

2026年、1秒差と3秒差

野村選手の記録は翌年に早くも脅かされました。2026年の第102回大会では、創価大学の小池莉希選手が56分48秒で区間賞を獲得し、駒澤大学の伊藤蒼唯選手が56分50秒で続きました。区間記録との差はそれぞれ1秒と3秒です。青山学院大学の1年生、石川浩輝選手も57分15秒で、従来の館澤選手の記録を上回っています。1大会で3人が57分17秒を上回ったことになります。

第1回大会の6区

6区の歴史は第1回大会にさかのぼります。1920年2月15日の復路は、箱根が大雪に見舞われる中、各校が前日の到着順に芦ノ湖をスタートしました。往路を制した明治大学は最終中継所の鶴見まで首位を守りましたが、10区で東京高等師範学校に逆転されています。雪の山道を下った当時と、100mを16秒台で駆け下りる現在とでは、道路も用具もまったく異なります。

学年で見ると、2026年に区間2位から4位に入った3人は、小池選手が3年生、伊藤選手が4年生、石川選手が1年生でした(読売新聞の区間記録歴代ベスト5による)。1年生から最上級生まで、さまざまな学年の選手が6区の上位に入っています。5区の歴代上位5人のうち4人が4年生の記録であるのと比べると、6区では下級生の記録も目立ちます。山上りと山下りで、求められる経験や適性が異なることをうかがわせるデータです(編集部分析)。

5区と6区は「山の2区間」

6区は5区と組み合わせて語られることの多い区間です。2025年の第101回大会では、青山学院大学が5区の若林宏樹選手(1時間09分11秒)と6区の野村選手の両方で区間新記録を出し、往路と復路の山の区間で他校に差をつけて連覇しました。山の2区間を両方とも上位で走れるかどうかが、総合順位に大きく影響します。

6区の後は、小田原中継所から平塚中継所までの7区21.3kmに入ります。下りで脚に負担がかかった後の平地区間で、7区の区間記録も2025年に駒澤大学の佐藤圭汰選手が出した1時間00分43秒です。6区と7区の記録がどちらも2025年に生まれていることから、この大会で復路序盤の水準が大きく上がったことがわかります。

往路復路左ほど速い青山学院大往路 5:18:08(1位)復路 5:19:26(1位)1/1位國學院大往路 5:20:02(4位)復路 5:20:05(2位)4/2位順天堂大往路 5:21:49(6位)復路 5:22:06(4位)6/4位早稲田大往路 5:18:26(2位)復路 5:26:03(8位)2/8位中央大往路 5:19:44(3位)復路 5:24:47(6位)3/6位駒澤大往路 5:23:00(7位)復路 5:21:50(3位)7/3位城西大往路 5:20:20(5位)復路 5:25:57(7位)5/7位創価大往路 5:24:02(8位)復路 5:27:38(13位)8/13位帝京大往路 5:30:25(17位)復路 5:22:50(5位)17/5位日本大往路 5:25:00(9位)復路 5:28:56(16位)9/16位
往路復路左ほど速い青山学院大往路 5:18:08(1位)復路 5:19:26(1位)1/1位國學院大往路 5:20:02(4位)復路 5:20:05(2位)4/2位順天堂大往路 5:21:49(6位)復路 5:22:06(4位)6/4位早稲田大往路 5:18:26(2位)復路 5:26:03(8位)2/8位中央大往路 5:19:44(3位)復路 5:24:47(6位)3/6位駒澤大往路 5:23:00(7位)復路 5:21:50(3位)7/3位城西大往路 5:20:20(5位)復路 5:25:57(7位)5/7位創価大往路 5:24:02(8位)復路 5:27:38(13位)8/13位帝京大往路 5:30:25(17位)復路 5:22:50(5位)17/5位日本大往路 5:25:00(9位)復路 5:28:56(16位)9/16位
第102回大会の往路・復路記録。6区で区間上位に入った創価大学と駒澤大学は、復路でそれぞれ13位、3位だった(公式記録をもとにVoxlynest編集部作成)

復路の流れを決める区間

6区は、前日の往路で生まれた差を受けて走る区間です。青山学院大学によると、2024年の第100回大会では、6区の野村選手が9km付近で2位との差を3分18秒、17km地点で3分45秒まで広げ、トップでたすきをつなぎました。2025年の第101回大会では、野村選手の区間新記録で小田原中継所での2位との差は3分49秒に広がっています。

往路順位総合順位1青山学院大1青山学院大4駒澤大2駒澤大6國學院大3國學院大3早稲田大4早稲田大2中央大5中央大7城西大6城西大5創価大7創価大11東京国際大8東京国際大9東洋大9東洋大14帝京大10帝京大赤線:復路で順位を上げた大学(往路11位以下は最下段に表示)
大学往路総合変化青山学院大1位→1±0駒澤大4位→2↑2國學院大6位→3↑3早稲田大3位→4↓1中央大2位→5↓3城西大7位→6↑1創価大5位→7↓2東京国際大11位→8↑3東洋大9位→9±0帝京大14位→10↑4色付きの行:2つ以上順位が動いた大学
第101回大会の往路順位と総合順位。青山学院大学は6区で差を広げ、往路1位のまま総合優勝した(公式記録をもとにVoxlynest編集部作成)

6区で差を広げられれば、7区以降の選手は余裕を持って走ることができます。逆に追う立場の大学にとっては、6区で差を詰めることが逆転への第一歩になります。2026年に区間2位、3位に入った創価大学と駒澤大学は、それぞれ往路8位、7位からのスタートでした。

参考資料

  1. 箱根駅伝とは(概要・歴史・豆知識)(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
  2. 箱根路の5区に君臨するのは「山の神」「山の妖精」から「山の名探偵」へ…近年は記録ラッシュ(読売新聞オンライン)
  3. 箱根駅伝 区間記録歴代ベスト5(読売新聞オンライン)
  4. 箱根駅伝連覇の青山学院大 MVPの野村昭夢(4years.(朝日新聞社))
  5. 陸上競技部が第100回箱根駅伝で大会新記録、2年ぶり7回目の総合優勝(青山学院大学)
  6. 過去の記録 大会詳細:第101回大会 2025年(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
  7. 過去の記録 大会詳細:第102回大会 2026年(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)

記録は大会公式サイト「過去の記録」に基づきます。

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