箱根駅伝の6区は、復路の最初の区間です。芦ノ湖をスタートし、前日に5区の選手が上った道を小田原中継所まで一気に下ります。距離は5区と同じ20.8km。5区が「山上り」なら、6区は「山下り」の区間です。この記事では、大会公式サイトと読売新聞の区間記録をもとに、6区の特徴と記録の歩みを整理します。
「落ちていくような」スピード
大会公式サイトによると、5区の標高差は約834mで、6区の選手はこれを一気に下ります。選手は平均して100mを16秒台前半で走り、時には13秒台までスピードが上がることもあるといいます。経験者は、その感覚を「落ちていくような」と表現しているそうです。100mを16秒で走り続けると、1kmあたり2分40秒のペースになります。
6区は下りだけの区間ではありません。芦ノ湖をスタートしてから国道1号の最高地点までは上りがあり、そこから小田原までの長い下りに入ります。上りと下りの両方に対応できる走りが求められる区間です。
第91回大会以降の記録
読売新聞によると、函嶺洞門の通行禁止によって、第91回大会から5区と6区はバイパスを通るコースに一部変更されました。このため、第90回大会以前の6区の記録は参考記録となっています。読売新聞の区間記録歴代ベスト5も、6区については第91回大会(2015年)以降の記録を対象にしています。
- 1位
- 野村昭夢(青山学院大)56:47(2025年)
- 2位
- 小池莉希(創価大)56:48(2026年)
- 3位
- 伊藤蒼唯(駒澤大)56:50(2026年)
- 4位
- 石川浩輝(青山学院大)57:15(2026年)
- 5位
- 館澤亨次(東海大)57:17(2020年)
2020年の第96回大会で東海大学の館澤亨次選手が出した57分17秒は、長く6区の区間記録でした。それを2025年の第101回大会で30秒更新したのが、青山学院大学の野村昭夢選手の56分47秒です。史上初の56分台で、野村選手は最優秀選手に贈られる金栗四三杯と、この大会から新設された大会MVPに選ばれています(4years.による)。
2026年、1秒差と3秒差
野村選手の記録は翌年に早くも脅かされました。2026年の第102回大会では、創価大学の小池莉希選手が56分48秒で区間賞を獲得し、駒澤大学の伊藤蒼唯選手が56分50秒で続きました。区間記録との差はそれぞれ1秒と3秒です。青山学院大学の1年生、石川浩輝選手も57分15秒で、従来の館澤選手の記録を上回っています。1大会で3人が57分17秒を上回ったことになります。
第1回大会の6区
6区の歴史は第1回大会にさかのぼります。1920年2月15日の復路は、箱根が大雪に見舞われる中、各校が前日の到着順に芦ノ湖をスタートしました。往路を制した明治大学は最終中継所の鶴見まで首位を守りましたが、10区で東京高等師範学校に逆転されています。雪の山道を下った当時と、100mを16秒台で駆け下りる現在とでは、道路も用具もまったく異なります。
学年で見ると、2026年に区間2位から4位に入った3人は、小池選手が3年生、伊藤選手が4年生、石川選手が1年生でした(読売新聞の区間記録歴代ベスト5による)。1年生から最上級生まで、さまざまな学年の選手が6区の上位に入っています。5区の歴代上位5人のうち4人が4年生の記録であるのと比べると、6区では下級生の記録も目立ちます。山上りと山下りで、求められる経験や適性が異なることをうかがわせるデータです(編集部分析)。
5区と6区は「山の2区間」
6区は5区と組み合わせて語られることの多い区間です。2025年の第101回大会では、青山学院大学が5区の若林宏樹選手(1時間09分11秒)と6区の野村選手の両方で区間新記録を出し、往路と復路の山の区間で他校に差をつけて連覇しました。山の2区間を両方とも上位で走れるかどうかが、総合順位に大きく影響します。
6区の後は、小田原中継所から平塚中継所までの7区21.3kmに入ります。下りで脚に負担がかかった後の平地区間で、7区の区間記録も2025年に駒澤大学の佐藤圭汰選手が出した1時間00分43秒です。6区と7区の記録がどちらも2025年に生まれていることから、この大会で復路序盤の水準が大きく上がったことがわかります。
復路の流れを決める区間
6区は、前日の往路で生まれた差を受けて走る区間です。青山学院大学によると、2024年の第100回大会では、6区の野村選手が9km付近で2位との差を3分18秒、17km地点で3分45秒まで広げ、トップでたすきをつなぎました。2025年の第101回大会では、野村選手の区間新記録で小田原中継所での2位との差は3分49秒に広がっています。
6区で差を広げられれば、7区以降の選手は余裕を持って走ることができます。逆に追う立場の大学にとっては、6区で差を詰めることが逆転への第一歩になります。2026年に区間2位、3位に入った創価大学と駒澤大学は、それぞれ往路8位、7位からのスタートでした。
参考資料
- 箱根駅伝とは(概要・歴史・豆知識)(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
- 箱根路の5区に君臨するのは「山の神」「山の妖精」から「山の名探偵」へ…近年は記録ラッシュ(読売新聞オンライン)
- 箱根駅伝 区間記録歴代ベスト5(読売新聞オンライン)
- 箱根駅伝連覇の青山学院大 MVPの野村昭夢(4years.(朝日新聞社))
- 陸上競技部が第100回箱根駅伝で大会新記録、2年ぶり7回目の総合優勝(青山学院大学)
- 過去の記録 大会詳細:第101回大会 2025年(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
- 過去の記録 大会詳細:第102回大会 2026年(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
記録は大会公式サイト「過去の記録」に基づきます。