箱根駅伝は10人で217.1kmをつなぐ競技です。1人のエースがいるだけでは勝てず、20km前後を走れる選手を少なくとも10人そろえる必要があります。この記事では、大会公式サイトが紹介するルールと、読売新聞の区間記録などのデータをもとに、大学の長距離チームがどのような仕組みの中で戦略を立てているのかを整理します。各校の内部の練習内容など、公表されていないことには踏み込みません。
16人のエントリーと当日変更
大会公式サイトによると、各大学は12月29日に1区から10区までの10人と補欠6人、計16人の区間エントリーを行います。補欠は本来、直前のけがや体調不良に備える枠ですが、補欠の選手はレース開始1時間前の最終エントリーでどの区間にも入ることができます。一方、一度1区から10区にエントリーされた選手は、ほかの区間に入り直すことはできません。
公式サイトは、このルールがあるためにチームによっては補欠枠を戦略的に使う場合があると説明しています。主力を補欠に置いておけば、相手校の配置や当日の体調を見てから区間を決めることができます。各校の監督は選手の状態を見ながら、ぎりぎりまで最終オーダーに頭を悩ませることになります。
予選会が求める「層の厚さ」
シード権を持たない大学は、10月の予選会を通過しなければなりません。公式サイトによると、予選会ではハーフマラソンのコースを一斉に走り、各校上位10人の合計タイムで本大会に出場する10校が決まります。月陸Onlineの結果では、2025年10月の第102回予選会の1位中央学院大学(10時間32分23秒)から10位立教大学(10時間36分56秒)までの差は4分33秒、10位と11位法政大学の差は17秒でした。
予選会から上位へ
予選会を経て本大会で上位に入る例もあります。第102回予選会を2位で通過した順天堂大学は、第102回大会で総合3位に入りました。4位で通過した日本大学も総合10位となり、シード権を獲得しています。順天堂大学は第101回大会で10位と7秒差の11位でシード権を逃しており、予選会から1年で表彰台まで順位を上げたことになります。
区間記録に見る学年構成
読売新聞の区間記録歴代ベスト5(第102回大会まで)で各区間の1位の記録を出した選手を学年で分けると、10区間のうち7区間が4年生、2区間が3年生、1区間が1年生でした。1年生の記録は、2020年に東京国際大学のY.ヴィンセント選手が3区で出した59分25秒です。5区では上位3人がいずれも4年生の時の記録です。
一方で、1年生が歴代上位に入る例も増えています。2026年には早稲田大学の鈴木琉胤選手が4区で1時間00分01秒(歴代2位)、青山学院大学の石川浩輝選手が6区で57分15秒(歴代4位)、國學院大學の野田顕臣選手が9区で1時間07分53秒(歴代5位)を記録しました。2025年には青山学院大学の小河原陽琉選手が1年生で10区の区間賞を獲得しています。
エースをどこに置くか
大会公式サイトは、2区に各校がエースを投入することが多いと説明しています。1区の選手が僅差で鶴見中継所に飛び込んでくるため、序盤の流れを引き寄せたい各校が力のある選手を置くからです。外国人留学生が起用されることが多い区間でもあります。一方で、5区と6区は山の上り下りという特殊な区間で、平地の力とは別の適性が求められます。どの区間に誰を置くかは、チームの総合力をどう配分するかという問題でもあります。
往路と復路への配分
10人の配置は、往路と復路のどちらに力を割くかという判断でもあります。第101回大会では、往路2位の中央大学が復路13位、往路14位の帝京大学が復路4位でした。第102回大会でも、往路2位の早稲田大学が復路8位、往路17位の帝京大学が復路5位と、往路型と復路型の違いがはっきり表れています。
走らない部員の役割
公式サイトによると、エントリーから漏れた部員の多くは「付き添い」などのスタッフとして大会を支えます。付き添いの仕事は荷物の管理から選手のマッサージ、体調の把握まで多岐にわたります。また、大会の運営そのものも関東学生陸上競技連盟の学生が中心となって担っており、予選を通過できなかった大学の学生も正月には補助員として参加しています。公式サイトは、中継所で倒れ込む選手を介抱する付き添いの姿がテレビ中継でよく映し出されると紹介しています。チームの戦略は、走る10人だけでなく、それを支える部員全体の上に成り立っています。
参考資料
- 箱根駅伝とは(概要・歴史・豆知識)(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
- 【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/チーム総合(2025年10月18日)(月陸Online(月刊陸上競技))
- 箱根駅伝 区間記録歴代ベスト5(読売新聞オンライン)
- 過去の記録 大会詳細:第101回大会 2025年(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
- 過去の記録 大会詳細:第102回大会 2026年(東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト)
記録は大会公式サイト「過去の記録」に基づきます。